デザイナー−コンテンンツ制作本部所属 佐々木久美|人物図鑑
好きなことを仕事にしよう
思い起こせば、「三つ子の魂百まで」を地でいっているのかもしれません。子供のころからゲームが大好きで、友達と交換してできるだけ多くのゲームで遊んだり、ゲームセンターへ行って他の人が遊んでいるのを眺めているだけで楽しんでいたり。気づけば、学生時代はゲーム三昧の生活になっていました。ゲーム雑誌も隅から隅まで読み込んで、有名ゲームメーカのみならず、さまざまな制作会社のカラーや、クリエイターたちの開発体制に至るまで、詳しくなっているほどでした。

そのうち私は、企業の研究員だった両親の影響で、特に強い将来設計もなく、自然と工業大学へと進路を進めていました。そんな私にも就職活動の時期がやってきました。当時は就職氷河期真っ只中。周囲を見渡しても、花形のはずの理系学生が、みな就職活動の苦労で疲弊していました。そんな様子を目の当たりにするうち、私の中に「どうせ苦労するのなら、いっそ好きなことを仕事にしよう」という想いが芽生えたのです。
私の好きなこと、それはもちろんゲーム。早速、ゲーム雑誌で目をつけていた制作会社にアプローチする日々が始まりました。ところがほとんど門前払い…。というのも、私の志望職種は理系出身という強みを生かしたプログラマーではなく、デザイナーだったからです。「プログラマーならぜひ働いて欲しいのに…」という言葉に後ろ髪を引かれつつも、スケッチブックを何冊も抱え、あきらめずにデザイナーとしての採用枠を探し続けました。そんな想いがなかったのか、最終的にはデザイナーとして、制作会社に採用が決まりました。
丁稚奉公キャラクターアニメーション制作修行
私が入社した頃は、3D格闘ゲームのブーム全盛期。その意味では、もしかしたら趣味で10年ほど続けていた少林寺拳法という、格闘技の経験が買われたのかもしれません。そう、制作会社が私に求めていたことは、3Dに動きをつける仕事、つまりキャラクターアニメーション制作でした。ここでは、キャラクターモデリングやドット打ちも経験しましたが、メインの仕事はアニメーション制作に落ち着きました。
当時まだ会社内にそのノウハウが不足しており、他社に丁稚奉公しながら修行をしつつ、ノウハウを体得していった感じです。そして、ひとたび一人前になれば、3D格闘ゲーム、ガンシューティングゲームなど、家庭用・業務用問わずこなしていく怒涛の日々。

そのうち、ふと今後のキャリアが頭をよぎり、もっと大きなステージでゲームを作りたいという、チャレンジをしてみたいと思うようになりました。そんな折、ちょうどナムコ(*)が中途採用の募集をしていたので、そのチャンスに思い切って手を伸ばしたのです。次なるステージとしてナムコを選んだ理由は、ナムコの3Dバラエティガンシューティングゲーム「オーバキューン」の制作に下請けとして関わったり、ナムコ出身のクリエイターとも頻繁に仕事をする機会に恵まれたりする中で、「職人気質を大切にするナムコ」という企業文化に強く心惹かれていたからです。キャラクターアニメーション制作を極めるなら、これ以上の環境はないはずと。
ナムコ入社後は、まさに即戦力を期待されていたのでしょう。「ソウルキャリバーII」や「DEATH BY DEGREES」といったビッグタイトルで、私のこれまで培ってきたノウハウを十二分に発揮する機会を与えられました。その後、「機動戦士ガンダム 一年戦争」や「テイルズ オブ ジ アビス」を経て、Xbox 360版の「THE IDOLM@STER」にて、5名の3Dアニメーターで構成されるチームを率いるリーダーを担当するに至りました。
* 2005年9月29日付けで経営統合を行ったバンダイナムコグループの国内組織再編の一環として、2006年3月31日に株式会社ナムコは、「株式会社バンダイナムコゲームス(ゲームコンテンツSBUの主幹会社)」と「株式会社ナムコ(アミューズメント施設SBUの主幹会社)」の2社に生まれ変わりました。ここでは、この再編以前の株式会社ナムコを指します。
キャラクターに血の通った肉体を持たせる仕事
3Dアニメーターの仕事は、「こんなギミックをもった動きが欲しい」というリクエストから始まります。キャラクターモデラーが作った3Dキャラクターデータを制御し、カメラアングルを設定し、そのリクエストに沿ったかっこいい動きを3Dアニメーションとして作り上げるのです。その制御の仕方は大きく分けて2種類あります。「手つけ」と「モーションキャプチャ」です。
「手つけ」とは、3Dアニメーションソフトを用いて、フレームと呼ばれる時間軸に沿って、3Dキャラクターデータの関節などの座標を操作したり、物理演算の動作確認をしたりしながら、手動で動きをつけていく手法です。

「モーションキャプチャ」とは、専用設備が整ったスタジオで、生身の人間にセンサーをとりつけた状態で、動いてもらい、その様子をデータ化することによって、3Dキャラクターデータに取り込み編集するという手法です。
「THE IDOLM@STER」は、3Dアニメーターの仕事内容を理解する上では、うってつけの題材かもしれません。「THE IDOLM@STER」には、「コミュニケーションパート」という会話画面と、「ダンスパート」という踊りの画面があるのですが、「コミュニケーションパート」では主に「手つけ」、「ダンスパート」では主に「モーションキャプチャ」と、使い分けています。
「コミュニケーションパート」では、手動でキャラクターごとの細かいニュアンスを演出し、「ダンスパート」では、ふりつけをもとに実際のダンサーに踊ってもらい、リアルなダンス表現を追及しているのです。それぞれ得意とする場面が異なりますので、どちらの手法にも精通する必要があります。
「手つけ」「モーションキャプチャ」ともに、最終的に手動で微妙な調整を行います。トータルで自然な動きを感じさせるか否か綿密にチェックするのはもちろん、音楽とのシンクロや、カメラアングルの調整など、ゲームの面白さや完成度に大きく影響する重要な作業です。
3Dアニメーターの醍醐味は、調整をくりかえすことによって、現実には存在しないはずのキャラクターに、血の通った肉体を持たせることができるというダイナミクスです。ゲーム中のキャラクターがどんどんリアルな人間味を帯びて、こちらに対峙してくるといったところでしょうか。その制作過程では、自分自身どんどんアドレナリンが分泌してくるのがわかります。「THE IDOLM@STER」のダンスパートでは、1曲ごとに完成へ向かう高揚感を感じっぱなしですから。
ハリウッドをはるか飛び越える、世界一のモーション
現在、私は「THE IDOLM@STER」に続いて、続編である「アイドルマスター Live for You!」を担当しています。ここでも、大成功を目指し、どんどん追加されていくダンスパートのキャラクターアニメーション制作に没頭する毎日です。
そんなエキサイティングな業務をこなしながらも、常日頃抱いている想いがひとつあります。それは、3Dアニメーターという職種をもっとメジャーなものにしていきたいということ。というのも、会社内はもちろん、ゲーム業界、もっと言えば日本の3DCG業界全体の問題なのですが、3Dアニメーターが不足しているという現状があるのです。
この原因としては、3Dアニメーターの門戸が狭いことが挙げられます。第一にキャラクターアニメーション制作のスキルを学ぶ環境が少ないこと、第二に目指すべきヒーロー/ヒロイン像がないことです。もちろん、現状でも3D自体に取り組む人は年々増加していますが、キャラクターのモデリングまでで精一杯で、それを「動かす」ところまでたどり着いていないことが多いのです。
キャラクターアニメーション制作には、2次元である絵を飛び越え、3次元のキャラクターに「時間軸」を加えることによって、4次元のダイナミクスが味わえるという他にはない魅力があります。ですから、私は一人でも多くの人が、この敷居を容易にまたげるような仕組みを作り上げたいと思うのです。まずは、フリーソフトを用いて、手軽に「キャラクターに血の通った肉体を持たせる」面白さが体験できるような入門用の Web サイトの開設から動き出していこうと思っています。子供の頃に作ったパラパラ漫画の面白さが忘れられないような人に、一度は絶対に覗いて欲しい世界なんです。
そんな草の根運動ですが、それをきっかけに、いつかすごい3Dアニメーターが巣立ち、そんな人たちがいずれ、ハリウッドをはるかに飛び越え、日本を世界一の3D立国まで高めてくれることを信じています。
(2002年入社/電気工学部)
※所属・役職・組織体等は、2008年取材当時のものです。
おすすメディア
ツールで実際に3Dアニメーションの世界を体験しよう
フリーのツールを用いて、一度キャラクターアニメーション制作の醍醐味を体験してみてください。3Dアニメーター志望以外の方もぜひ。
- SOFTIMAGE | XSI Mod Tool
- 個人利用のみ、商用利用はできませんが、アニメーションについては、普段私が仕事で使っているツールとまったく同じ機能を有しています。機能満載なので戸惑うかもしれませんが、基本的な操作とAnimation Editerの使い方を覚えた後は、表現することに専念してもらえれば、と。また、このmod toolには、はじめからリグ(3Dモデルを動かしやすくるための道具。人形でいうところの操り糸みたいなもの)が仕込まれたキャラクターモデルが入っているので、すぐにモーション作成から試せます。
- 個人サイトですが、「SoftImage | XSI道場」がXSIの操作を学習するのに非常に有効です。
- Mod Toolだとレンダリングができないので、作品制作が若干不便かもしれません。レンダリングも可能な下記のようなフリーソフトも挙げておきます。
- Autodesk Maya 2008 - 無償体験版
- XSI同様、社内でよく使われているMayaのPLE版(無償体験版)です。レンダリングが可能ですが、ウォーターマーク(透かし)が入ります。
- Blender.jp - Blender Japanese Website
- こちらはインターフェイスのクセが強いため、こちらの操作法に慣れてしまうと、就職した後に少し戸惑うかもしれませんが、PCの必要スペックが低いので手軽に始めたいならこちらから。
シチュエーション別スケジュール
部下がいる時
- 09:50
- 出社。
- 10:10-10:30
- 「体調どうよ?」「最近どうよ?」などとプロジェクトの作業と関係ないことをザックリ聞きつつ、昨晩出したメール(クオリティチェック内容)をスタッフに説明。
- 10:30-12:00
- 作成中のダンス、右の人の動きを6200-6600フレームを修正。
- 12:00-13:00
- 昼食。
- 13:00-15:00
- 作成中のダンス、右の人の動きを6600-7500フレームを修正。
- 15:00-16:00
- プロジェクト進捗会。
- 16:00-16:30
- 進捗会で出た問題について担当プログラマーと相談。
- 16:30-17:00
- ビューワーで自分が作ったデータの粗探しをしつつ、修正作業。
- 18:00-18:30
- 夕食。
- 19:00-21:30
- ビューワーで自分が作ったデータの粗探しをしつつ、修正作業。
- 21:30-23:50
- ほかのスタッフが作成したモーションをチェック。チェック項目を具体的にメールに書いて送る。
- 23:50
- 退社。日を越さないのが一応の目標。
モーションキャプチャーの日
- 08:40-09:00
- 出社。メールチェックし、今日使うキャプチャーリストをかばんにつめる。
- 09:00-09:25
- キャプチャースタジオへ移動。飲み物が足りないので、スタッフにお使いを頼む。今日はじめて現場を手伝うスタッフに作業内容を説明。
- 09:50-10:30
- 役者さんスタジオ到着。本日撮影分のキャプチャーリストをみんなに配り、今日撮影する内容の説明。スタッフに今日のお弁当の注文の集計をお願いする。役者さんの着替え時間などを利用して、昨日納品されたばかりのデータをノートパソコンで披露。
- 10:30-12:25
- 撮影。役者さんが頑張っている手前、撮影中は決して座らないのだ。
- 12:25-13:40
- 昼食。前倒しで撮影が進んでいるので、今日撮影する楽曲の数を増やすことに。 音のデータが足りないので、未来研にいったん戻り、キャプチャースタジオにトンボ帰り。
- 13:40-16:30
- 撮影。3曲目の撮影の区切り目を変えたい、と役者さんから申告される。ファイル名や撮影順、誰が踊るかの調整を行い、スタッフ全員に結果を伝える。役者さんが着替えている間にスタッフと打ち合わせ。
- 16:30-17:45
- 役者さんと打ち合わせ、リハーサル。
- 18:10
- 未来研に移動。
- 18:10-19:00
- メールチェック後、夕食。
- 19:00-23:50
- 翌日の準備、データ整理、振り付け練習用ビデオの作成。
- 24:00
- 退社。
特に締切に追われていない時
- 09:50-10:00
- 出社。メールチェック。日によっては出社前にフィットネスクラブでひと汗流します。
- 10:00-12:00
- アニメーションラウンドテーブルに向け資料作成。
- 12:00-13:00
- 昼食。
- 13:00-17:55
- アニメーションラウンドテーブルに向け資料作成続き。
- 18:00
- 退社。
- 19:00-22:30
- 映画学校で講義を受講。
- 22:30-23:30
- 学校のロビーで缶ビール飲みながら課題作品の打ち合わせ。
- 24:45
- 帰宅。




