デザイナー 渡邊祐介|人物図鑑
ゲームメーカーなら、いろいろなものがカタチにできる
絵を描き始めたのは相当幼い頃。当時の落書き、新幹線の絵などが今でも保管されているのですが、いつ描いたのか覚えていないくらいです。それから時は流れ、大学を決めるときには、デザインの仕事に就こうと考えるようになりました。大学では、工業意匠学科の製品デザインの研究室に在籍しており、そこでは自動車メーカーや家電メーカーへ行くのがお決まりのコースでした。製品デザイナーになるためには、企業実習という選考過程に参加する必要があるのですが、ポートフォリオ作成が遅れていた私は、それに間に合わないという大ピンチから就職活動がスタートしました。
遅れに遅れていたポートフォリオが完成し、落ち着いて就職先を考えた結果、ゲーム業界の業務用ゲーム機のデザイナーが浮かび上がってきました。というのは、たとえば自動車メーカーでは自動車だけしかデザインできないけれども、ゲームにはガン、ドライブ、クレーンゲームなどいろいろな種類があるので、その分いろいろなデザインができると考えたのです。立体を作るデザイナーとしてそこに面白みを感じました。
そこから、出遅れた焦りもあって、他の業務用ゲームメーカーも節操なく受けた感じでしたが、第一志望はナムコ(*)でした。大学の空き時間にゲームセンターに行って、「リッジレーサー」や「レイブレーサー」で対戦して遊ぶ中で、その筐体にも惹かれていましたし、何より、ファミコン時代の「スカイキッド」の絵柄や音楽がとても素敵で印象に残っているのですが、ナムコにはこんなセンスを持った人がいて、またこのセンスが好きな人たちが集まるはずだから、私もフィーリングが合うはずだと思ったのもありますね。自社キャラクターが「ファミスタ」に登場したり、しかもやたら足が速かったりとか、そういう洒落っ気や遊び心が大好きだったのです。
* 2005年9月29日付けで経営統合を行ったバンダイナムコグループの国内組織再編の一環として、2006年3月31日に株式会社ナムコは、「株式会社バンダイナムコゲームス(ゲームコンテンツSBUの主幹会社)」と「株式会社ナムコ(アミューズメント施設SBUの主幹会社)」の2社に生まれ変わりました。ここでは、この再編以前の株式会社ナムコを指します。
パズルを解くように工夫しながら理想の形を追い求める
研修期間を終えて最初の担当は、「忍者アサルト」というガンゲームでした。このゲームでは、デラックス筐体とスタンダード筐体の2種類があり、そのうちスタンダード筐体をまかされました。はじめて作った筐体ということで、自分がデザインし、図面をひいた部品が形になった段階で「ものづくりしてる!」といきなり感動した覚えがあります。

業務用ゲーム機の開発における筐体づくりは、メカエンジニア、電気エンジニアとともに三位一体の共同作業です。最初のデザインはデザイナーが起こしますが、現実に落とし込むときには、材料の強度や配線などが関係してくるため、一緒になって考えていきます。私は、みんなで作業するのが好きなので積極的にコミュニケーションをしているうちに、最初はメカやハードの知識はゼロだったのにもかかわらず、今ではだいぶ知識がついてきたと感じています。こうして、その知識や経験から、実現可能なデザインの勘所が頭の中でイメージできるようになります。
一方でデザインのアイデアを出す際には、材料の特性に関する知識やコスト意識が染み付いていると、その制約から逃れられなくなってくるという問題もあります。アイデアの段階では、むしろ「これがいいと思う」「これが作りたい」という純粋な気持ちが大切なのかもしれません。だから、AM事業本部のデザイナーを目指す方々は、その気持ちさえあれば、何も知識がない状態で来ていただいて大丈夫だと思います。
基本的には、まずは理想形を自由に追い求めるところからはじめて、材料やコストの問題が発生したときに、どこが大事でどこが不要かを見極め、不要なものを削っていくという作業になります。バンダイナムコゲームスの業務用ゲーム機の場合、最初から最後まで他人にまかせることなく自分でできるので、こだわりを徹底できる環境だと言えますね。また、他のプロジェクトメンバーから、注文があった場合もその言い分をよく聞いた上で、解決案や代替案を用意し、工夫して自分の理想に近づけていくことになります。ここが、パズルのような問題解決を求められる勝負どころであり、醍醐味でもあります。
「機動戦士ガンダム戦場の絆」の筐体すべてをデザイン
ここ2年ほど、「機動戦士ガンダム戦場の絆(発売元: 株式会社バンプレスト、販売元・開発: 株式会社バンダイナムコゲームス)」にかかりっきりになって、ほぼすべての筐体デザインを担当したのが最近の仕事です。実は、ドーム筐体自体はガンダムというコンテンツが乗る前からあった歴史ある筐体で、私はこの原型の段階からデザインを担当していました。それに加えて、小学校高学年の頃からガンダムが好きだったこともあり、プロジェクトが立ち上がったときには、他の誰でもなく私に!という思いでアピールし、無事このポジションにおさまることができました。

デザインの進め方として、私は最初はかならず鉛筆で描くようにしています。いきなり3Dソフトで描くと、いかにも3D的な絵になってしまうからです。ですから、プレゼンテーション用に3Dソフトで仕上げるイメージです。部品の図面はCADを使って自らひきます。それはより自分の思い通りに仕上げるためであって、コミュニケーション手段が他にある人は、他の方法でもかまわないと思いますし、私自身状況によって方法は変えています。たとえば、今回の「戦場の絆」では、レバーのデザインのためにバルサを削って「握り心地」を試行錯誤するところから始めました。レバーの位置や角度などの「使いやすさ」は、メカエンジニアが入念なテストの上決めたものだったので、それを損なわないような「握り心地」に重点を置いたためです。
この仕事をやっていて嬉しいこととして、お客様に遊んでいただき、喜んでもらっている姿をダイレクトに見られるということがあります。特に「戦場の絆」の場合には、ドーム筐体のインパクトが訴えるものが大きく、お客様が筐体を見た途端、わ〜っと感情的になっている姿を目の当たりにして、ドーム筐体に関わってきた長年の想いも重なり、とても感動した覚えがあります。さらに、雑誌に掲載してもらったり、ロケテストで長蛇の列ができたりと、これまでとは比べものにならない期待を肌で感じたゲームでした。
かっこいいことはどうかっこいいんだろう
私は、AM事業本部のデザイナーは、デザインのテクニックの優劣よりも、どういうデザインがどのように良くて、どういうデザインがどのようにダメか、といった判断基準を明確に持っていることが求められると考えています。そして、あるデザインにした説明を「かっこいいと思ったからです」で終わらせるのではなく、「これはこのような理由があるからです」と根拠が言えることが大切なのかな、と。つまり、「なんとなく」ではない「意味のある」デザインを積み重ねていかなくてはならないのですね。
いわゆる製品デザインは、機能が横並びの中で、デザインが最大の差別化ポイントになっていることが多い世界です。一方ゲームは、筐体のデザインだけでなく、中身も含めて、総合的な世界観を演出し、最終的には遊んでもらって面白いかどうかというところで評価される、ある意味シビアな世界です。だからこそ、デザイナーは意味があるデザインをこころがけ、確実にお客様の喜びに貢献しなくてはならない責務があると考えています。
やはり、自分のデザインで、できるだけ多くのお客様が、たくさん遊んでくれること。日々、そのための試行錯誤の繰り返しです。将来的には、みんなの信頼を得た上で、自分の想いをできるだけ詰め込んで、そこに思う存分こだわって、成果を出していくことにチャレンジしてみてもいいかなと思っています。
(1998年入社/工学部工業意匠学科)
※所属・役職・組織体等は、2006年取材当時のものです。
おすすメディア
- 美術館や博物館
- これは社会人になってからも続けて欲しいことですが、美術館や博物館に積極的に足を運んで欲しいと思います。せっかくですので、「なぜその美術館・博物館を選んだのか」「どんな展示物のどんなところに惹きつけられたのか」をじっくり考えてみることをお勧めします。それを通して、デザインという抽象的なものを、他人に説明できる力が養われるはずです。まずは、入社前に、最低一箇所、自分なりの視点・動機で、美術館・博物館を選び、実際に足を運んでみてはいかがでしょうか。
シチュエーション別スケジュール
デザイン案検討時
- 10:00-10:30
- 出社してメールを確認したり。
- 10:30-12:00
- 筐体デザイン打ち合わせの準備発表するラフスケッチが揃っているか?など確認の作業。前日の晩に浮かんだ案があれば即ラフスケッチして追加。緊張が少々高まる。
- 12:00-13:00
- 昼休み
- 13:00-15:00
- 筐体デザインの打ち合わせ。制作した筐体案のラフスケッチをプロジェクトメンバーに発表。それぞれの案に込めた魅力や意図が伝わっただろうか?打ち合わせでメンバーからもらった意見を持ち帰る。
- 15:00-20:00
- さらにラフスケッチ制作作業。打ち合わせで出た意見を取り入れるかどうかの検討。取り入れの可否について、理由をよく考えながら、意見を取り入れた次段階ラフスケッチの制作。意見からさらに発展させた新たなラフスケッチの制作。脳が疲労したところで帰る。
試作部品設計時
- 08:50-09:00
- 出社。打ち合わせで引き渡すデータの用意と確認。
- 09:00-10:00
- 成形メーカーさんと打ち合わせ。前日夜に描きあがった試作図面のデータをメーカーさんに引き渡す。
- 10:00-12:00
- 製図。他の部品の製図に取り掛かる。CADにて設計製図を行う。ガンガン描く。
- 12:00-13:00
- 昼休み
- 13:00-18:00
- 部品の試作型確認。製図はとりあえず中断し、試作型のメーカーさんに出掛ける。試作型が設計どおりか、型を計測したり目視をおこなって確認する。記録、報告のため写真を撮影したりする。『ものづくりの現場』というような職人的雰囲気に包まれ気分が昂揚したりする。
- 18:00-18:30
- 会社に戻ってしばし休憩。
- 18:30-20:30
- 製図。午前中の続き。ガンガン描く。何種類も描く。
- 20:30-20:40
- 休憩。目と腕と脳を休める。
- 20:40-23:00
- 製図。ひたすら描く。
- 23:00-
- 終電の時間がギリギリなのに気づいて帰る。
プロジェクトのハザマ
- 10:00-12:00
- 出社。資料と机の整理。事務処理。プロジェクト作業中に荒れ果てた机の周りを整理。
- 12:00-13:00
- 昼休み
- 13:00-15:00
- 雑誌を読む。多忙な時期に読まなかった分を取り返すように読む。定期購読誌を興味のある分だけ読む。
- 15:00-17:30
- 資料収集のため外出→直帰。会社にない雑誌や書籍、その他の資料となるものを探すべく出掛ける。本屋以外にも雑貨店、服屋、靴屋、玩具店、量販店…。
- 17:30-
- 早いけど多忙な時期に働いたので帰る。




